第1話を書いてから、ずいぶん時間が経った。
当時の僕は、鏡を見るたびに気分が沈む毎日を送っていた。育毛シャンプーに頼り、AGAも知らず、「コンプレックスを抱えたまま生きていくしかないのか」と思っていた。
今の僕は、新天地で、新しい仕事をして、カツラをつけて、誰にも薄毛だと気づかれずに生活している。積立投資を続け、副業も少しずつ形になってきた。
完璧ではない。カツラの維持費はかかるし、「言えない」という感覚は残っている。FXで大儲けしたわけでもない。
でも、第1話の自分と比べると、間違いなく前に進んでいる。
5年後のロードマップを書く。
1年後——カツラ生活をさらに安定させる。副業収益を月3万円以上に育てる。積立投資を継続する。
3年後——iPS細胞治療の臨床試験の状況を追いながら、治療費用の目標金額を貯める。新天地での人間関係を深め、生活の基盤を固める。
5年後——もしiPS治療が実用化・普及していれば、真剣に検討する。カツラを卒業できる日が来るかもしれない。
iPS細胞を用いたAGA治療の研究は、今も世界中で続いている。AIを活用した医療研究のスピードは、想像以上に速い。5年後には、今とは全く違う選択肢が生まれているかもしれない。
そして、もう一つ。
新天地で、少しずつ、人と繋がるようになってきた。コンプレックスを抱えていたあの頃は、人と深く関わることを避けていた気がする。今は違う。
薄毛丸幸太郎の物語は、まだ続いている。
第1話から読んでくれた人、途中から読んでくれた人、ありがとう。同じ悩みを持つ誰かの、一歩踏み出すきっかけになれたなら、これ以上うれしいことはない。
——薄毛丸幸太郎