地毛が戻って、自信は確かに少し出た。

でも、ナデシコさんに「近づく」となると、話は別だった。

僕は、彼女の教育係だ。同じ職場で、毎日顔を合わせる。もし告白して、フラれたら——あの気まずさの中で、これからも一緒に働けるのか。想像しただけで、足がすくんだ。

それに、相手はナデシコさんだ。元自衛官で、サバサバしていて、人生経験も豊富で、バツイチであることすら笑い飛ばせる人。28歳。明るくて、誰からも好かれる。

一方の僕は、つい最近まで頭を隠していた、怖がりの30代だ。釣り合うわけがない、と思ってしまう。

「いい感じですね」と言ってくれた。でも、それは部下が上司に言う、ただの世間話かもしれない。深読みして、勝手に期待して、勝手に傷つくのは、もう嫌だった。

近づきたい。でも、近づけない。

毎日、隣の席にいるのに、その距離が、世界で一番遠く感じた。

こういうとき、僕はいつも一人で抱え込む。でも、抱え込んでいても、何も進まないことも、もう知っている。