マープを2ヶ月ほど続けた。
効果がなかったわけじゃない。頭頂部の印象は確かに変わったし、「最近なんか雰囲気変わった?」と一人の同僚に言われた。バレてはいなかった。
では、なぜ限界を感じたのか。
一つ目の理由は、メンテナンスの頻度だ。地毛が伸びると結び目がずれてくるので、定期的にサロンに通う必要がある。これが思ったより時間と手間がかかった。
二つ目は、費用の問題だ。継続するとなると、年間でまとまった額になる。AGA治療の薬代も続いているので、合計するとかなりの出費になってきた。
でも、一番大きかった理由は三つ目だ。
それは、「このまま今の場所でマープを続け、バレないまま過ごし続けることへの疲れ」だ。
毎月サロンに通い、同僚の視線を気にし、「バレたらどうしよう」という緊張を持ちながら過ごす日々。効果はある。でも、この綱渡り感が、思ったよりしんどかった。
「そもそも、なぜ僕はこんなに気を使わなければいけないのか」と、ある夜ふと思った。
答えは単純だ。今の場所の人たちが、僕のことを「知っている」からだ。
ならば——環境を変えてしまえばいい。
第1話で書いた、あの発想に戻ってきた。転職して、引っ越す。新天地で初登場の瞬間さえ整えれば、カツラでもマープでも、誰も「前の状態」を知らない。
迷っていたフェーズが終わった。次の話から、僕は転職を本気で考え始める。