仕組みも分かった。リスクも分かった。残る最大の壁は、お金だった。
自毛植毛の費用は、多くのクリニックが「1グラフト(株)あたりいくら」という単価制を採っていた。
最初、これがピンとこなかった。1株が数百円。なら、そんなに高くないんじゃないか——と思ったのが間違いだった。
必要な株数は、薄くなった範囲によって変わる。広ければ広いほど、何千株という単位になる。電卓を叩いてみて、僕は固まった。範囲によっては、総額が200万、300万を超えることもある。
しかも、実際に何株必要かは、診てもらわないと分からない。つまり、申し込む前の段階では、最終的にいくらかかるのか、自分では読めない。
怖がりで、お金に慎重な僕にとって、この「総額が読めない」というのが、何より怖かった。青天井に見える見積もりの前で、僕の足は、また止まった。
——ただ、ひとつだけ、心強いことがあった。
僕には、貯めてきたお金があった。もともとは、iPS細胞による治療がいつか実用化される日のために、コツコツ積み立ててきた資金だ。
でも、iPSはまだ遠い。何年先になるか分からない夢のために置いてあるお金を、「今できること」に使う、という選択肢が、このとき初めて、現実味を持って浮かんできた。
待ち続ける数年か。動ける今か。
お金の壁は高い。でも、越えられない壁ではないかもしれない。そう思い始めたとき、僕は、ある料金プランに出会うことになる。