ナデシコさんと、二人で食事をしてから、僕の気持ちは、もう止められなくなっていた。

付き合いたい。できれば、結婚したい。僕はもう30代だ。本気で、そう思っている。

でも、告白の前に、どうしても引っかかっていることがあった。

僕は、彼女に、肝心なことを話していない。元々ひどい薄毛だったこと。長いことカツラで頭を隠していたこと。そして、自毛植毛をして、今の地毛があること。

黙っていても、たぶん、バレはしない。植毛した地毛は、もう僕自身の髪だ。でも——それでいいのか。

ナデシコさんは、「隠さない人」だった。「バツイチです」も「腰に爆弾抱えてます」も、全部オープンにして、それでも前を向いている人だった。僕が惹かれたのは、まさにそこだった。

その人と一緒になりたいと思うなら、僕も、隠すのをやめなきゃいけないんじゃないか。

薄毛で悩んで、転職して、引っ越して、カツラをかぶって、植毛して。情けない遠回りばかりの人生だった。でも、その全部が、今の僕をつくっている。

それを、笑われてもいい。引かれてもいい。全部話したうえで、それでもこの人が隣にいてくれるなら、そのときは、本物だ。

次に二人になったとき、僕は、全部話そうと思う。気持ちも、秘密も、まとめて。

——人生で一番、勇気のいる告白が、もうすぐ始まる。次のフェーズに続く。