告白を決めた矢先、思いがけない展開があった。
残業終わり、たまたま二人になって、ナデシコさんが「丸さん、ごはんでも行きません? お腹ぺこぺこで」と、いつもの調子で誘ってくれたのだ。
デートと呼んでいいのかは分からない。でも、初めて、二人きりで向き合って食事をした。
彼女は、よく食べ、よく笑った。自衛官時代の訓練のきつかった話、災害派遣の話、そして離婚のこと。「あのときは落ち込んだけど、今は、辞めてよかったとも、別れてよかったとも思ってます。前に進んだ結果ですから」と、さっぱり言った。
僕も、少しだけ自分の話をした。ずばり言うことは出来ない、すなわち、薄毛をきっかけに転職したこと、、、これは、さすがに、頭髪のことの核心までは、まだ言えなかった。まあ、頭髪の事件は抜きにして、他のことを引き合いに出して転職理由を話してコチラに引越してきたことを伝えた。彼女は「へえ、丸さんにも、いろいろあったんですね」と、茶化さずに聞いてくれた。
楽しかった。本当に、楽しかった。
帰り際、彼女はまた敬礼して「ごちそうさまでした! お疲れ様でした!」と言った。その笑顔を見て、僕の決意は、いよいよ固まった。
この人と、ちゃんと向き合いたい。そのためには——隠していることを、全部、話さないといけない。
楽しい夜の終わりに、僕は、少しだけ、武者震いしていた。