恋愛相談を、誰にすればいいのか分からなかった。
新天地に来てから、まだ深い友達はいない。前の職場の連中には、口が裂けても言えない(そもそも、その人たちから逃げるように転職したんだから)。家族に「好きな人ができた」なんて、恥ずかしくて言えない。
一人で抱えていたら、ある夜、スマホの広告で「電話占い」というものが目に入った。
正直に書く。最初は鼻で笑った。電話占いなんて、女性が使うものだろう、と。男が、しかも30代の男が、恋愛のことで占いに電話するなんて、どう考えても格好がつかない。
でも、その「誰にも言えない」という状況が、僕の指を動かした。匿名で、顔も見られず、相手はプロで、口外もしない。考えてみれば、今の僕に一番合っている相談相手かもしれなかった。
申し込んでみた。
電話の向こうの占い師さんは、思ったより普通の、落ち着いた声の人だった。僕は、しどろもどろに状況を話した。職場に好きな人がいること。年下で、明るくて、自分には不釣り合いに思えること。そして——自分には、人に言えない「コンプレックス」があること(さすがに、それが何なのかまでは言えなかった)。
占い師さんは、静かに聞いてから、こう言った。「あなたが思っているほど、相手はあなたの欠点を見ていませんよ。人は、自分の欠点ばかり大きく見えるものです」。
ありきたりな言葉かもしれない。でも、誰かにそう言ってもらえたことが、思いのほか効いた。
占いを信じるか信じないかは、別にして。「一歩、踏み出してみたら」と背中を押してくれる声が、あのときの僕には必要だったんだと思う。
電話を切ったあと、僕は不思議と、少しだけ前を向いていた。
男が電話占い。格好はつかない。でも、人間、追い詰められると、なりふり構っていられないものだ。